株式会社興洋 漁船の網引きで活躍する「タイヤゲージ」網の巻き上げ技術にも空気圧が重要
- 取材日 2022年8月4日
- 店舗名 株式会社興洋
- 住所 福島県いわき市小名浜上神白字館下73
- TEL 0246-54-3157
みなさんこんにちは。旭産業は創業が昭和21年4月、戦後復興とともに全国を駆け巡ったモータリゼーションとともに必要となったタイヤの安全を守るためにタイヤゲージの開発を行い、国内メーカーとして安全な自動車社会を築いた会社の一つではないかと自負しています。
今回ご紹介する「株式会社興洋」は創業が旭産業と同じ昭和20年代なのですが、陸では無く「海で」活躍する会社の一つです。取引先としても珍しく、海上の安全のためにタイヤゲージを利用していただいています。
本日は株式会社興洋の代表取締役 高村さんと営業課長の田山さんに、海上で利用されているタイヤについて深くお話を伺ってきました。
「株式会社興洋」について
興洋さんは福島県いわき市に位置します。創業は昭和23年で旭産業(昭和21年生まれ)と2歳違いのとても歴史のある会社です。栄町(小名浜漁港近く)に興洋電機製作所として設立。漁業用電気機器の販売修理を始めたことに由来します。
戦後復興の日本の漁師に必要な機械を興洋さんは製造していたようです。その時の様子が地元の新聞にも取り上げられておりその記事が大切に保管されていました。
定置網で利用されている興洋製のボールローラー
今回取材に伺ったのは「ボールローラー」と言われる漁業の定置網などを引き上げるための機器に組み込まれたタイヤ状のボールの空気圧を弊社製品でメンテナンスしているためです。
「ボールローラー」とは聞いたことのない名称ですが、まずは下の画像を見てほしい。こちらの機械が「ボールローラー」というのですがどのように使われていると思いますか?
漁の際に網を巻き上げる機械と一言でいうと非常に簡単なのですが、普通は漁船で漁に出ると網は人の手で上げたり、ドラム式のローラーで巻き上げたりするのが一般的です。このローラーはゴム製で空気圧のおかげで人の手のように優しく網を巻き上げ、網に傷をつけにくいという特徴があります。
説明を受けて驚いたのですが、昭和後期には定置網の距離がなんと50km(いわき・日立方面に50km)にも及んだというのです。50kmもの網をあげるのに318m/分(時速19km)の速度で巻き上げていたということにさらに驚き。そんな長い網を引き上げるにはかなりの工夫が必要だったようです。
ボールローラーはこの部分 ↓ に取り付けられており、網を巻き上げていく。
このボールローラーの空気圧管理に弊社のエアゲージが利用されています。
このエアゲージは興洋用に製作したOEM製品で、ボールローラーの空気圧を点検するために作られたものです。(非売品) 実際に空気圧を測る際には
このように使います。
空気圧の測定はバネ方式とブルドン管方式というものがあるのですが、現在の興洋モデルはブルドン管方式です。旧タイプのバネ式のモデルも現場にありました。
もちろんこのボールローラー本体へ空気を入れる際にもエアケージが利用されています。
取材をしていて旭産業のロゴの入ったエアゲージを見つけるとテンションが上がります。
興洋さんの工場を見学
興洋さんの工場の中をくまなく見学させていただきました。その中でも驚いたのがこちらの地下に電線を敷設する際に利用する機械 「EB230B型 ボールローラー」でした。
海上で培った定置網巻き上げの技術が、最近は地下の電線を敷設するための機械となって地上で活躍するように進化したと言っていいのではないでしょうか。
地下に敷設するケーブルも海上の定置網と同じように傷をつけないように敷設する際にこのボールローラーが役に立つということです。その空気圧を守っているのが弊社のエアゲージというのもまた同時に誇らしいものです。
北海道の大型漁船の巨大ボールローラー
興洋さんでは小型用漁船の網巻き上げボールローラーのみならず大型漁船のボールローラーも長年の研究とともに実用化までこぎつけ、ようやく出荷するというまさに出荷寸前のところを取材しました。
網が非常に重いと2本のタイヤでは引き上げるのが難しく、3本で巻き上げる仕組みを導入したという。見た目が完全に宇宙船のエンジン部分でこのまま海から空に飛べるのではないかという雰囲気でした。ここまで大型のタイヤとなると空気圧はもはや完全に自動化しており、弊社製品での計測ではなかったのですが、新しい分野に挑戦する興洋さんの姿がとても美しく見えました。これからも興洋さんのご活躍を応援しています。
さて、いかがだったでしょうか。今回は福島県いわき市の株式会社興洋さんを取材してきました。タイヤは陸のもの。ずっとそのように考えていました。車やトラックはもちろん、空から着陸する飛行機ですら着陸時にはタイヤを利用する。しかし今回の興洋さんのボールローラーは完全に海で利用するもの。陸には一切触れないタイヤという異色なタイヤを取材することができて非常に有意義でした。タイヤは陸だけのものではない、海の安全の一部も旭産業の製品がお役に立てているのであれば光栄なことだと思います。
そして、このボールローラーの網巻き上げ機は富山県氷見の定置網で利用されているということを伺いました。富山氷見のブリや定置網にもとても馴染みがあるのだが、太平洋で培われた技術や製品が日本海の漁船でそのノウハウが生かされているということです。太平洋から日本海へ、かつては富山氷見の漁師が小田原にその漁法を習いに行ったという話もあり、太平洋と日本海の交流が漁業発展にもつながっているのではないでしょうか。ボールローラーの空気圧という切り口であるが少しでもこの日本の発展に役立てれば本望です。本日は興洋の皆様、ご協力ありがとうございました。