タイヤ空気圧の雑学うんちく百科

自転車から航空機まで、タイヤによって空気圧はどれくらい違うのか?

■巨漢ひったくり犯人の「耐え難い重さ」

2009年に東京板橋でミニバイクによるひったくり事件が連続して発生。複数の被害者の証言によれば「犯人は太った男で、ミニバイクの後輪がつぶれていた」とのこと。警察がミニバイクに乗った似たような体型の男をマークして捜査するうち、ナンバーが一致する「星」が浮上。捕らえてみれば身長170センチ、体重約125キロ、30歳無職の男。「つぶれたタイヤが動かぬ証拠」という見出しで、新聞等で報道されました。バイクや自転車では、タイヤにかかる荷重の内で、乗る人の体重が大きな割合を締めています。だから標準よりも体重が大きくオーバーしている場合は、空気圧を多めに入れないと、この犯人のように「タイヤがつぶれる」ことになります(この場合に限っては、それがいい結果をもたらしたといえますが……)。
適正な空気圧というのはタイヤにかかる重量によって変わるものなのです。
さて、タイヤを履いた乗り物は、自転車から航空機まで様々ですが、それぞれの重さによって、空気圧はどれくらいちがうのでしょうか。

■自転車、航空機、400トンダンプ、それぞれの空気圧は?

乗り物別、総重量と空気圧の関係

上の表をご覧になって、「はあ?」と思われる方が多いのではないでしょうか。100キロもない自転車と1トンの自動車がほとんど変わらない一方で、同じ総重量400トンのジャンボ機と鉱山用ダンプの空気圧がなんでこんなちがうの???──当然の疑問です。

はじめに「適正な空気圧はタイヤにかかる重量によって変わる」と書きましたが、同じタイヤでより重いものを支えようとする場合には空気圧を高くしなければなりません(注:いくらでも高くできるわけではありません)。
でも、種類のちがうタイヤの場合は、その考え方は成り立たないのです。例えば自転車と乗用車のタイヤでは太さが全然ちがって、中に入る空気の容量が乗用車の方が圧倒的に多い。ジャンボ機と400トンダンプの場合も同じで、ジャンボ機のタイヤは直径約120センチで幅約48センチなのに対して、400トンダンプのタイヤは直径3メートル90センチ、幅1メートル38センチもあるのです。
同じ袋にたくさんの空気を入れようとすると、当然空気圧が高くなりますが、袋を大きくすれば空気圧を上げる必要はないというわけです。

要するにタイヤと荷重の関係を理解する上で、大切なのはタイヤが支えられる重量というのは、タイヤの中に入っている空気の「量」で決まるということ。このことをお分かりいただいた上で、それぞれのタイヤの大きさを思い浮かべながら、改めて上の表をご覧ください。今度は「なるほど」と納得していただけるはずです。